「北欧チェアに憧れるけれど、ブランドごとの違いがわからない」そんな声をよく耳にします。北欧家具ブランドの中でも、カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn)は特別な存在です。世界で最も有名な椅子のひとつ「Yチェア」を生み出したこのブランドの歴史と、創業100年の無垢家具専門店RAM(ルームアート松井)で実際に出会える全6モデルを紹介します。
カール・ハンセン&サンは、1908年にデンマーク・オーデンセで家具職人カール・ハンセンが創業した家具メーカーです。115年以上の歴史を持ち、北欧家具を代表するブランドとして世界中で愛されています。
創業当初はヴィクトリア様式の手作り家具を製作する小さな工房でした。1910年代に機械生産を導入しつつも、手仕事の品質を守り続けるスタイルを確立。1934年、大恐慌の最中に息子ホルガー・ハンセンが経営に加わり、会社を引き継ぎました。1943年には正式なパートナーシップとして、社名を現在の「カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn)」に改めています。
ブランドの転機は1949年。デンマークを代表する家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーとのパートナーシップが始まります。最初のコラボレーションで生まれたのがCH22、CH23、CH24(Yチェア)、CH25の4脚。翌1950年に発売されたYチェアは瞬く間に世界的ヒットとなり、70年以上経った今も生産され続けています。

1950〜60年代、Yチェアの成功でカール・ハンセンは黄金期を迎えます。しかし1970年代に入ると北欧家具ブームが去り、安価な量産家具が市場を席巻。カール・ハンセンも例外ではなく、経営は厳しい時代が続きました。
転機が訪れたのは1990年代です。ミニマルなライフスタイルへの関心が高まる中、「本当に良い椅子を長く使いたい」という価値観が世界的に広がり、Yチェアが再評価されました。デンマークの小さな工場で変わらぬ品質を守り続けたことが、ブランド復活の原動力となったのです。

カール・ハンセンは「ウェグナーだけのブランド」ではありません。デンマーク家具デザインの父と呼ばれるコーア・クリント、ミニマルデザインの巨匠ポール・ケアホルム、そして日本の建築家・安藤忠雄など、時代を超えた多彩なデザイナーの作品を製品化しています。
共通しているのは、素材の持ち味を引き出すシンプルな構造と、職人の手仕事で初めて実現できるディテールへのこだわりです。デザイナーは変わっても、カール・ハンセンのものづくりの軸はぶれていません。
カール・ハンセンの家具は、デンマーク・ゲルステズにある自社工場で一貫生産されています。創業から100年以上、生産拠点を海外に移すことなく、デンマーク国内でつくり続けているのです。
工場では最新のCNC加工機と職人の手仕事が共存しています。木材の切り出しや粗加工は機械が担い、曲げ木の成形・組み立て・ペーパーコードの手編みは熟練の職人が行います。効率化できる工程は機械に任せ、人の手でなければ出せない品質は職人が守る。このバランスが、高い品質を保ちながら世界中の需要に応える生産体制を支えています。
カール・ハンセンは、FSC認証を受けた森林から調達した木材を使用しています。持続可能な森林管理のもとで育った木だけを使うことで、次の世代にも同じ品質の家具を届けられる体制を整えています。

工場で出る端材や木くずもエネルギー源として再利用し、廃棄物の削減に取り組んでいます。そもそも「修理しながら何十年も使い続けられる家具をつくる」こと自体が、最も本質的なサステナビリティといえるでしょう。
100年以上にわたって世界中で選ばれ続けるのには、明確な理由があります。
Yチェアは14個の木製パーツと約120mのペーパーコードで構成され、完成までに100以上の工程を経ます。金属の釘やネジを使わない伝統的な木組み技術で、一脚ずつ職人が仕上げています。機械では再現できない曲げ木の滑らかなカーブは、職人の手仕事だからこそ実現できるものです。

ペーパーコードは15年〜20年ほど毎日座り続けると、徐々にたわみが出てきます。この場合、座面を張り替えることで新品同様の座り心地に戻せます。RAMではカール・ハンセン&サン正規販売店として、ペーパーコードの張り替え修理にも対応しています。一度買って終わりではなく、数十年にわたって使い続けられる点が、無垢家具とペーパーコードチェアの大きな魅力です。
ウェグナーが生涯でデザインした椅子は500脚以上。その中から生まれたカール・ハンセンのチェアは、流行に左右されない普遍的な美しさを持っています。シンプルな線と無垢材の自然な表情が、和室にも洋室にも静かに溶け込みます。
カール・ハンセンのチェアは、木材と仕上げの組み合わせで表情が大きく変わります。

オーク、ビーチ、ウォールナットなどの樹種と仕上げの組み合わせで、同じデザインでもまったく違う雰囲気になります。仕上げごとの特徴やお手入れ方法の詳しい比較は、こちらの記事で解説しています。
RAMでは、カール・ハンセン&サンの正規品を6モデル取り扱っています。それぞれの特徴を紹介します。
1950年の発売以来、世界中で愛され続けるカール・ハンセンの代表作です。Y字型の背もたれが構造を支えながらデザインのアイコンとなっています。背もたれとアームレストが一体成型の曲げ木で作られており、どの角度から見ても美しいフォルムが特徴です。
座面にはペーパーコードを手編みで張っています。面全体で体重を受け止めるため長時間座っても疲れにくく、使い込むほどに体に馴染みます。座面高は45cm(EU仕様)と43cm(日本仕様)の2種類。日本の一般的なダイニングテーブル高さ(70〜72cm)には43cmが合いやすく、身長に対してテーブルが高めに感じる方や和のテイストに合わせたい方に選ばれています。テーブルの高さや体格に合わせてどちらかを選びます。
Yチェアは世界中で正規ライセンス品の人気が高いため、類似品・コピー商品も多く出回っています。正規品のCH24は、脚の裏側に「Carl Hansen & Søn」の刻印と、1脚ごとの個別シリアル番号、デザイナー署名入りのラベルが付いています。RAMはカール・ハンセン&サンの正規販売店として、本物のYチェアのみを取り扱っています。

エルボーチェアの最大の特徴は、一枚の無垢材から削り出された背もたれです。背中を支えるだけでなくアームレストとしても機能する一体構造で、食事中に肘を置いたり、読書中に腕をのせたり、さまざまな姿勢で快適に使えます。Yチェアよりもコンパクトなサイズ感で、テーブルの下にすっきり収まります。

ウェグナーの生誕100周年を記念して製品化されたチェアです。アームには無垢材、脚にはスチールという異素材の組み合わせが、モダンで軽やかな印象を与えます。スタッキングできるので、来客時にさっと椅子を追加できる実用性も備えています。

1950年代、コペンハーゲンの名高いコンサートホール「ヴェガ」のために作られたチェアです。成形合板が描く滑らかな曲線とスチール脚の組み合わせが印象的。木座面のVega T(座面高45cm)と、クッション付きのVega P(座面高46cm)の2タイプがあります。どちらもスタッキング可能です。

デンマークのデザイナー、ポール・ケアホルムによる作品です。スチールフレームにペーパーコードを編み込んだ、ミニマルを極めた一脚。ペーパーコードは体を面全体で受け止めるため座り心地がよく、通気性にも優れています。軽量でスタッキングも可能です。


カール・ハンセン&サンのチェアは、どのモデルも素材と仕上げの組み合わせで表情が変わります。「身長○cmでテーブルの高さが○cm、どのチェアが合いますか?」とお伝えいただければ、スタッフが最適な一脚をご提案します。オーダーメイドで座面の高さ調整も可能です。各商品ページ、またはお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。