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椅子の種類事典|形・用途・デザイン史・素材で読み解く完全ガイド

椅子という家具は、人類が腰を下ろすという行為のためだけに、数百年にわたり驚くほど多様な形に進化してきました。

ハイチェア、スツール、ベンチ、ダイニングチェア、ウィンザー、シェーカー、北欧モダン──。同じ「椅子」というカテゴリの中に、形の違い、用途の系譜、デザイン史の流れ、素材技術の蓄積が層になって積み重なっています。本記事は、その膨大な椅子の世界を「形」「用途」「デザイン史」「素材」という4つの切り口で整理し、それぞれの椅子がどんな背景で生まれ、何が特徴なのかを深掘りしていく種類事典です。

木とスチールを組み合わせた北欧モダンチェア CH88。アームに無垢材、脚にスチールを用いた名作椅子
木の温もりとスチールのシャープさが同居する北欧モダンチェア(CH88・ウェグナー作)

【形別】椅子の種類 ─ 形・かたちによる分類

椅子はまず「形」で見分けられます。座面の高さ、背もたれや肘の有無、脚の構造といった"かたち"の違いが、その椅子の使い方をほぼ決定づけます。ここでは代表的な6つの形を、寸法とともに整理します。

スタンダードチェア(サイドチェア/アームチェア)

スタンダードチェアは、座面高40〜46cm前後・背もたれ付きの、もっとも一般的なかたちの椅子の総称です。

ダイニングやワークデスクなど、短〜中時間・正しい姿勢で座る用途を広くカバーする標準サイズで、肘掛けの有無によりサイドチェア(肘掛けなし)とアームチェア(肘掛けあり)の2タイプに分かれます。サイドチェアは横方向にコンパクトでテーブル下に深く収納でき、アームチェアは肘を預けて肩・首の負担を減らせます。

同シリーズの無垢オークチェア2脚を左右に並べた対比写真。左は肘掛けのないサイドチェア(ゆるく湾曲した木製背もたれ・4本の細い木製脚・ベージュのファブリック張座面)、右は同じ素材・同じ座面で両側に湾曲した木製アームが背もたれから前脚へなめらかに下りるアームチェア。同じ照明・同じ床・同じ斜め前方アングルで等距離に配置
スタンダードチェアの2タイプ:サイドチェア(左)とアームチェア(右)の対比(AI生成)

ハイチェア(カウンターチェア)

ハイチェアは座面の高い椅子の総称で、代表格が座面高60〜70cmのカウンターチェアです。対面キッチンやダイニングカウンターに合わせて使われ、座面が高いぶん足が床に届きにくいため、フットレスト(足置き)の有無や横貫の高さが座り心地を大きく左右します。

カウンターチェアの高さの合わせ方は、下の記事で詳しく解説しています。

カウンターチェアの選び方

無垢オークの背もたれ付きハイチェア(カウンターチェア)1脚を斜め前方から捉えた商品アップ。低めの一文字背もたれ、ベージュのファブリック張座面、肘掛けなし、4本の細身の木製脚、足元には前後左右をつなぐ横貫(フットレスト相当)が一周巡る。背景はオフホワイトの漆喰壁+ライトオークの無垢フローリング、横からの暖かい自然光
ハイチェア(カウンターチェア)の一例(AI生成)

ローチェア(座椅子)

ローチェアと座椅子は、座面が床に近い低い位置に設定された椅子の総称で、床に座る家族や子供と目線を合わせやすい座具です。

脚の有無により2タイプに分かれます。脚のあるローチェアは座面高20〜30cm前後でフローリングの上でも安定して使え、脚のない座椅子は畳やラグに直接置いてリクライニング機構などで床座姿勢を支えます。

同シリーズの無垢オーク座具2脚を左右に並べた対比写真。左は座面高約25cmのローチェア(4本の短い無垢オーク脚・ベージュのファブリック張座面・ゆるく湾曲した木製の低い背もたれ・肘掛けなし)、右は脚が完全に無く座面が床に直接接地する座椅子(同素材の無垢オークフレーム+ベージュファブリック張座面・やや高めのハイバック背もたれ・肘掛けなし)。同じ照明・同じ無垢オーク床・オフホワイトの漆喰壁・同じ斜め前方アングルで等距離に配置
ローチェア(左)と座椅子(右)の対比(AI生成)

スツール(バースツール)

スツールは、座面と脚だけ・背もたれ無しの座具の総称です。

どの方向からも腰掛けられる取り回しの良さが特徴で、座面高により食卓・作業用の低〜中座面スツールと、バーカウンター用の高座面バースツール(座面高75〜85cm)の2タイプに大別されます

スツールの種類と高さの選び方は、下の記事で詳しく解説しています。

スツールとは?高さ早見と椅子・ベンチとの違い

同シリーズの無垢オーク・背もたれなしスツール2脚を左右に並べた対比写真。左は座面高約45cmの中座面スツール(4本の無垢オーク脚・ベージュのファブリック張丸座面・背もたれ無し・肘掛けなし)、右は明らかに脚が長く座面高約78cmのバースツール(同じ無垢オーク4本脚・足元に横貫がフットレスト相当として一周巡る・同じベージュファブリック張丸座面・背もたれ無し)。同じ照明・オフホワイトの漆喰壁・ライトオークの無垢フローリング・同じ斜め前方アングルで等距離に配置し、座面高さの違いを明確に対比
スツール(左)とバースツール(右)の対比(AI生成)

ベンチ

ベンチは2〜3人が並んで座る長椅子の総称で、幅120〜180cmが一般的なサイズです。

椅子と組み合わせて食卓の1辺だけをベンチにする「片側ベンチ配置」は、省スペースな食卓として現代でも人気があります。背もたれ無しはテーブル下にすっきり収まり、背もたれ付きは長時間の食事や団らんに耐えるダイニングの主役になります。

オークの細い角材でロの字に組まれた脚部に、グレーのブークレ生地を張った座面と背もたれを載せた2〜3人掛けの木製ベンチの正面アップ
背もたれ付きベンチの一例(HLベンチ140/無垢オーク脚+ファブリック座面)

ロッキングチェア

ロッキングチェアは、座面と脚をつなぐ湾曲したランナー(弓型の脚部)によって前後に揺れる、安らぎのための椅子です。

読書や授乳、夕食後のひとときなど、長く座って心身をゆるめる用途に向きます。ハンス・J・ウェグナーの「J16」が代表作として知られています。

無垢オークのロッキングチェア1脚を斜め前方から捉えた商品アップ。床に明瞭に接地する弓型の木製ランナー(rocker)、ウィンザー風スピンドル背もたれ、両側の木製肘掛け、ベージュのファブリック張座面。背景はオフホワイトの漆喰壁+ライトオークの無垢フローリング、横からの暖かい自然光
ロッキングチェアの一例(AI生成)

【用途別】椅子の種類 ─ 使う場所による分類

同じ形の椅子でも、「どこで、何のために座るか」によって、座面高・奥行き・背もたれの角度の最適値は変わります。ここでは使う場所による代表的な6つの分類を、寸法と用途の文脈とともに整理します。

ダイニングチェア

ダイニングチェアは食事の時間に使う椅子で、テーブルとの差尺27〜30cmを確保するため座面高42〜46cmが標準です。

無垢ウォールナットの長方形ダイニングテーブルを囲む木製チェア。手前にグリーン布張りアームチェア、奥に木製サイドチェア。明るい白壁のショールームに観葉植物とペンダント照明
無垢ダイニングテーブルとチェアの食卓シーン例

座面の奥行きは40〜45cmと浅め、背もたれはほぼ直立に近い角度で、姿勢の正しさと立ち座りのしやすさが重視されます。

ダイニングチェアの具体的な選び方は、下の記事で解説しています。

おしゃれなダイニングチェアの選び方

リビングチェア・パーソナルチェア

リビングチェア・パーソナルチェアは、くつろぎの時間を過ごすための一人掛けの椅子です。

淡色オーク無垢の円形ダイニングテーブル(マッシュルーム型1本脚)を挟んで、グレーのファブリック張りパーソナルチェア2脚。無垢パイン床の白壁空間に花瓶と本
グレー布張りパーソナルチェアを配した一人時間の空間例

ダイニングより座面が低く(35〜42cm)、背もたれは10〜15度ほど後ろに傾斜、座面奥行きも45〜55cmと深く、読書や音楽鑑賞に没頭できる設計です。

ラウンジチェア・イージーチェア

ラウンジチェア・イージーチェアは、パーソナルチェアをさらに深く倒し、ほぼ寝そべるような姿勢でくつろぐ椅子です。

ウォールナット無垢フレームにネイビーのファブリック張クッションを載せた一人掛けラウンジチェア2脚と、同シリーズのオットマンを無垢オーク床のリビングに配したコーディネート
無垢ラウンジチェアとオットマンを並べた一例

座面高30〜40cm・背もたれ傾斜20〜30度が一般的で、脚を投げ出すためのオットマンとセットで使われることが多い形式です。

ラウンジチェア・イージーチェア・パーソナルチェアの違いと選び方は、下の記事で詳しく解説しています。

ラウンジチェアとは?イージーチェア・パーソナルチェアとの違いと選び方

オフィスチェア・ワークチェア

オフィスチェア・ワークチェアは、長時間のデスクワーク用に人間工学に基づいて設計された椅子です。

ダークグレーの樹脂製背もたれとファブリック座面、肘掛け付きで、ガス昇降シリンダーとキャスター付き5本脚ベースを備えた、どこにでもある一般的なプラスチック製オフィスチェア1脚
一般的なプラスチック製オフィスチェア・ワークチェアの一例(AI生成)

座面・背もたれの高さやリクライニング角度、ランバーサポート、アームレストなど多軸の調整機構を備え、回転式・キャスター式が標準です。座面やフレームに樹脂を使い、オフィスや学校・公共施設で広く普及した汎用タイプから、メッシュ構造で体圧分散や通気性に優れた高機能タイプ(アーロンチェアなど)まで、価格と機能の幅がとても広いのが特徴です。

ガーデンチェア

ガーデンチェアは、庭やテラスで使う、耐候性を重視した椅子です。

チーク無垢材の木枠に屋外用ロープを編み込んだリゾート風のガーデンラウンジチェア1脚。ウッドデッキの上に置かれ、背後に緑のある屋外テラスの雰囲気
チーク材+屋外用ロープ編みのガーデンチェアの一例(AI生成)

雨風や紫外線にさらされても劣化しにくいよう、耐候性の高いチーク材や、アルミ鋳造・FRP・屋外用ロープなどが用いられます。

ベランダや庭で使える雨に強いガーデンチェアの選び方は、下の記事で詳しく解説しています。

ガーデンチェアの選び方|ベランダに置く雨に強いおしゃれな椅子

キッズチェア・ベビーチェア

キッズチェアは子供の体格に合わせた座面が小さく低い椅子の総称、ベビーチェアは大人のダイニングに目線を合わせる幼児用の高座面チェアです。

左に座面の低い小さな無垢オークのキッズチェア、右に高さ調整できる無垢オークのグローアップ型ベビーチェアを同じ床・同じ照明で等間隔に並べ、座面高と大きさの違いを対比した写真
キッズチェア(左・低座面)とベビーチェア(右・高座面のグローアップ型)の大きさ比較(AI生成)

キッズチェアは座面高20〜30cm前後で無垢材の小さなスツールやサイドチェアが代表例。ベビーチェアは座面高40〜55cm程度で、子供の成長に合わせて高さを変えられるグローアップチェアが長く使える設計として人気です。

【デザイン史別】椅子の系譜 ─ 様式で読み解く

椅子のデザインは、それぞれの時代の社会構造・技術・思想を映す鏡として進化してきました。ここでは現代まで影響を残す代表的な7つの様式を、時代順に整理します。

ウィンザーチェア(17世紀イギリス)

ウィンザーチェアは、17世紀末のイギリスで生まれた、座板にスピンドル(背棒)を放射状に挿し込む構造を持つ椅子です。

ウォールナットの座板にオークの細いスピンドル(背棒)を放射状に挿し込み、頂部に薄い背板を載せたキャプテンチェアタイプのウィンザーチェアの正面アップ
ウィンザー系キャプテンチェアの一例(無垢ウォールナット座板+オークスピンドル)

キャプテンバック・コムバック・フープバックなど背もたれ形状のバリエーションが豊富で、18〜19世紀のアメリカに渡って独自の進化を遂げました。

ウィンザー系キャプテンチェアの歴史と選び方は、下の記事で解説しています。

キャプテンチェアとは?無垢材ウィンザーチェアの歴史と選び方

シェーカーチェア(19世紀アメリカ)

シェーカーチェアは、18世紀末にアメリカへ渡来したシェーカー教徒のコミュニティで、19世紀に確立した、装飾を一切排した実用本位の椅子です。

細いラダーバック(はしご状に横桟を数本渡した背もたれ)とテープ織りの座面、まっすぐで細い木製の旋盤脚を持つ、装飾を一切排したシェーカーチェア単体の3/4前方アップ。メープル系の細い木材
シェーカーチェアの一例(細いラダーバック+テープ織り座面+まっすぐな旋盤脚/装飾を排した質素な木製チェア・AI生成)

「美は実用に宿る」という思想のもと、細いラダーバック(はしご状の背もたれ)、テープ織りまたは籐の座面、まっすぐな脚という3要素で構成され、その純粋に機能のみを追求した造形が、20世紀のミニマリズムや北欧デザインに影響を与えました。

アーツ&クラフツ運動(19世紀末〜20世紀初頭イギリス)

アーツ&クラフツ運動は、19世紀後半のイギリスでウィリアム・モリスを中心に起こった、「手仕事の復権」「素材の正直さ」「実用美」を掲げた芸術運動です。

柾目オーク(quarter-sawn oak)の縦スラット(垂直桟)の背もたれと、露出したほぞ接ぎの木組みが見える、無骨で実直なアーツ&クラフツ様式の木製アームチェア単体の3/4前方アップ。モリスチェア風
アーツ&クラフツ様式の一例(柾目オーク+垂直スラット背+露出したほぞ接ぎの木組み/無骨で実直な造形・AI生成)

装飾を排して構造そのものを見せる姿勢は、後の北欧モダン・ジャパニーズモダンへと続く「機能と素材に誠実な造形」の出発点に位置づけられます。無垢家具専門店RAM(ルームアート松井)が扱う無垢家具の哲学も、この思想と直接つながっています。

バウハウス・モダニズム(1910年代末〜1930年代ドイツ)

バウハウス・モダニズムは、1919年にドイツで設立された造形学校バウハウスから始まった、装飾を排したミニマルなスタイルです。

光沢のある曲げスチールパイプ(チューブ)のフレームに、黒革のストラップを張った座面と背もたれを組み合わせた、ミニマルなバウハウス様式のチューブラースチールチェア単体の3/4前方アップ
バウハウス・モダニズムの一例(曲げスチールパイプのフレーム+黒革ストラップの座面・背もたれ/ミニマルなチューブラースチールチェア・AI生成)

スチールパイプを世界で初めて椅子のフレームに使用したマルセル・ブロイヤーの「ワシリーチェア」が代表作で、現代のミニマルインテリアの源流となっています。

北欧モダン(20世紀デンマーク・スウェーデン)

北欧モダンは、1930〜60年代のデンマーク・スウェーデンを中心に発展した、機能美と手仕事を両立させたスタイルです。

無垢オークフレームに革張りの円形座面、頂部に湾曲した薄い背もたれを載せた、ハンス・J・ウェグナーCH20エルボーチェアの単体正面アップ
北欧モダンの代表作・CH20エルボーチェア単体アップ(無垢オーク+革張座面)

有機的な曲線・温かみのある無垢材・人間工学に基づく座り心地が三位一体となった様式で、ハンス・J・ウェグナーらの名匠を生みました。代表ブランドはカール・ハンセン&サンです。

カールハンセンのYチェアなど名作椅子は、下の記事で詳しく解説しています。

カールハンセン|Yチェアなど6モデルをRAMで体感

北欧家具の名作CH20エルボーチェアの商品写真。曲木加工のアームが美しい
北欧モダンの代表例(CH20 エルボーチェア)

ミッドセンチュリーモダン(1940〜60年代アメリカ)

ミッドセンチュリーモダンは、戦後アメリカで発展した、新素材と量産技術を取り入れたスタイルです。

成形合板またはFRP樹脂の一体成形シェル(座面と背もたれが一続きの曲面)に、細い木製ダウェル脚(エッフェル風の細脚)を組み合わせた、軽量なミッドセンチュリーモダンのシェルチェア単体の3/4前方アップ
ミッドセンチュリーモダンの一例(FRP一体成形シェル+木製ダウェル脚/軽量なシェルチェア・AI生成)

チャールズ&レイ・イームズ夫妻が成形合板やFRPを駆使したシェルチェアを生み出し、軽量で量産可能な椅子の道を切り開きました。新素材を活かした実験的な作品が次々に登場した時代です。

ジャパニーズモダン(20世紀後半の日本)

ジャパニーズモダンは、戦後の日本で発展した、伝統的な木工技術と現代デザインを融合させたスタイルです。

一枚の薄い無垢板を有機的な曲線に削り出して背もたれ兼アームとし、3本の木製脚で支えたヤナギチェアの正面アップ。柳宗理の流れを汲む彫塑的な造形
ジャパニーズモダンの一例(ヤナギチェア/削り出し無垢材+3本脚)

柳宗理のバタフライスツール(1956年)に代表され、飛騨高山・山形天童・福岡大川といった産地が欅・楢・栗など国産材を活かした家具を生み出しました。RAMで扱う「NS-GS」も、飛騨の老舗工房による現代ジャパニーズモダンの一例です。

【素材別】椅子の種類 ─ 素材技術の系譜

椅子の素材は、その時代の技術の到達点を反映します。長らく木と布・革・籐が主役だった歴史のあと、20世紀になって成形合板・金属・樹脂・メッシュが次々と参入し、それぞれが新しい座り心地と造形を生みました。

無垢材(ソリッドウッド)

無垢材は、木の幹から切り出した、芯まで一枚の木でできた素材です。

オークの無垢材表面を接写したマクロ写真。同心円状に走る年輪と導管、中央付近の自然な節、削り出した木肌の艶が見える素材そのものの質感
無垢材(オーク)の木目マクロ ─ 年輪・導管・自然な節・削り出した木肌の質感(AI生成)

ウォールナット・チーク・オーク・チェリー・欅・水楢など樹種により性格はまったく異なり、強度が均一で50〜100年の長期使用にも耐え、修理・パーツ交換が容易な素材です。

無垢材がサステナブルな理由は、下の記事で詳しく解説しています。

無垢材が「究極のサステナブル家具」である3つの理由

成形合板(プライウッド)

成形合板は、薄くスライスした木の単板を繊維方向を交互に重ねて接着し、熱と圧力で曲げ成形した素材です。

曲げ成形された成形合板の木口を接写したマクロ写真。薄い単板が何層も積層・接着された層構造が断面にはっきり見え、湾曲した合板面が手前に伸びる素材そのものの質感
成形合板の積層断面マクロ ─ 薄い単板が何層も重なった層構造と曲げ成形された面(AI生成)

3次元の自由曲面が作れることと、無垢材より軽量で割れにくいことが特徴で、椅子の造形に革命をもたらしました。イームズ夫妻のシェルチェアが代表例です。

曲木(ベントウッド)

曲木は、木を蒸して柔らかくし、型に沿わせて曲げる技術で作る素材です。

黒塗装の曲木で大きなループ状の背もたれと2本のサポート、湾曲した4本脚を組み上げ、籐編みの丸い座面を持つ、トーネットNo.18タイプの曲木椅子の正面アップ
曲木の代表例(No.16サイドチェア/黒塗装ベントウッド+籐編み座面)

1本の木から複雑な曲線を生み出せるため、軽くしなやかな構造を実現します。トーネットの「No.14チェア」が19世紀に工業化に成功し、無垢材と成形合板の中間にある「もう一つの木の素材」として現代の北欧家具にも広く使われています。

スチール・金属フレーム

スチール・金属フレームは、20世紀のバウハウスで本格採用された、椅子の構造素材です。

鍛冶仕上げの黒い鉄棒フレームを3本脚に組み、湾曲した黒い成形合板の背もたれと丸い座面を載せたMagisオフィチーナチェアの正面アップ
スチールフレームの一例(オフィチーナチェア/鍛造スチール脚+成形合板)

シャープな直線・細いラインで強度を確保でき、木では到達できない造形を可能にします。クロームメッキで光らせるか艶消し黒で表現するかで印象は大きく変わり、空間のコントラストを生む素材として現代でも重宝されます。

樹脂・プラスチック

樹脂・プラスチックは、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどを成形した素材です。

一体成形されたグレーのプラスチック製チェア1脚。背もたれから座面・4本脚までが滑らかな樹脂で一体に成形された、カフェや公共施設で使われる汎用的なスタッキングチェアをスタジオ背景で撮影
一体成形のプラスチック製チェアの一例 ─ カフェ・公共施設で使われる汎用的な成形プラスチック椅子(AI生成)

軽量・耐水・色彩自由・量産可能という4つの利点があり、屋外使用にも耐えるため、カフェ・公共施設・教育施設で広く使われています。パントンチェアが代表作として知られています。

メッシュ(編み材)

メッシュは、20世紀末に登場した、椅子素材のもっとも新しい系譜です。

メッシュ張りのワークチェアの座面を中距離で写した写真。フレームの縁ごと座面パン全体が写り、椅子の座面と分かる距離で、張力のある編みメッシュの織り目と通気孔が主役として見える
メッシュ素材が張られたワークチェアの座面 ─ フレームの縁ごと写し、編みメッシュの織り目・通気孔が分かる距離(AI生成)

体圧分散・通気性・追従性の3点に優れ、面そのもので体を支えるため夏でも蒸れにくく、現代オフィスチェアの標準素材となりました。アーロンチェアが代表例です。

レザー(革張り)

レザーは、ファブリックと並ぶ椅子の張地素材の二大選択肢で、使い込むほどに艶や色味が変化する「育つ素材」です。

革張りの椅子の座面を中距離で写した写真。木製フレームに載った革のシートクッション全体と縁のパイピングが写り、椅子の座面と分かる距離で、本革のシボ・ステッチ・飴色の艶が主役として見える
革が張られた椅子の座面 ─ 縁のパイピングや木枠ごと写し、本革のシボ・ステッチ・飴色の艶が分かる距離(AI生成)

動物の皮を鞣して仕上げた本革と、樹脂を布や不織布の表面に張った合成皮革に大別されます。本革は座るうちに体型になじみ、表面に飴色の艶が宿るのが魅力。RAMで扱うチェアもファブリックまたはレザーから選べるモデルが多くあります。

張地・編み座面(ペーパーコード・籐・テープ)

張地・編み座面は、木製フレームと組み合わされる座面素材で、椅子の個性を決定づけます。

紙紐を撚って編んだペーパーコード(YチェアCH24で世界的に有名)、軽く弾力性に富む籐(ラタン)、シェーカー伝統のテープ織り、色柄の自由度が高いファブリックなどがあります。

木枠に編まれたペーパーコード座面を中距離で写した写真。オーク無垢の座枠ごと編み座面全体が写り、椅子の座面と分かる距離で、撚った紙紐が規則的に編まれた織り目が主役として見える汎用形
ペーパーコードが編まれた椅子の座面 ─ 木枠ごと写し、撚った紙紐の織り目が分かる距離(AI生成・汎用形)

椅子の種類を「学ぶ」ための地図

本記事では、椅子の種類を形・用途・デザイン史・素材の4つの切り口で整理してきました。一脚の椅子は、これら4軸が交差する地点に立っています。たとえばYチェアは「標準的な形×ダイニング用途×北欧モダン様式×無垢材+ペーパーコード」という4軸の交点に位置し、アーロンチェアは「ワークチェアの形×ワーク用途×メッシュ×現代エルゴノミクス」の交点にあります。

無垢材のウィンザーチェア(キャプテンチェア背もたれ)と丸テーブルを組み合わせたコーディネート
ウィンザーの系譜にあるキャプテンチェアと丸テーブル

椅子は道具であり、歴史の証人であり、素材技術の結晶でもあります。種類を知ることは、自分の暮らしに迎える一脚を選ぶための土台になります。本記事が、その地図の役目を果たせれば幸いです。

気になる家具は、東京・品川の店舗で実物をご覧いただけます。

無垢材の質感や座り心地を確かめてから、サイズ・素材を自由にオーダー。専門スタッフが無料でご相談を承ります。

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