ベニワレンのラグを探していると、どこかで手が止まります。生成りの地に黒い線が走る、あの毛足の長いラグ。ところが調べていくと「本物」「ヴィンテージ」「風」という言葉が入り混じり、見た目の似たものが素材も作り方もばらばらに並びます。
同じ図柄に見えて、一方は何十年も前に織られた古いラグ、もう一方は図柄を機械でなぞった新品です。どちらも「ベニワレン」として売られていますが、届いてからの手触りはまったく別ものです。
ベニワレンとして売られているものは、大きく3種類に分かれます。創業100年の家具専門店RAM(ルームアート松井)が、その違いと選び方を解説します。
ベニワレンラグとは、生成りの地に黒い線で菱形が入った、毛足の長い手織りのウールラグです。日本ではモロッコラグと総称されるラグのなかで、この菱形の図柄を指してベニワレンと呼ぶことが一般的です。
線は定規で引いたようにはなりません。手で織るため菱形はひとつずつ形が違い、線の太さも揺れます。ベニワレン柄がプリントの柄と違って見えるのは、この揺れがあるからです。
ウール100%の毛足が、踏んだ足を沈ませます。平らに織ったラグでは出ない厚みです。膝やくるぶしが当たる硬さが消えるため、床に座る時間が長い家ほど効きます。
厚みは横から見るとよく分かります。床板とラグのあいだにできる段差が、そのまま毛足の高さです。
ウールという素材そのものの性質は下の記事で解説しています。
毛足が長いため、掃除の手間は増えます。ヘッドが毛を巻き込んで前に進まない。食べこぼしの粒が毛の奥まで落ちる。この2つは避けられません。
日常は、毛足を起こすようにゆっくり掛けることと、細かいゴミを粘着ローラーで拾うことで足ります。汚してしまったときの洗い方と手入れの手順は下の記事で解説しています。
ベニワレンとして売られているものは、次の3つのどれかです。
| 呼ばれ方 | 織り方 | 年月(使用感) | 寸法 |
|---|---|---|---|
| ヴィンテージ | 手織り・ウール | 乗っている | 一枚ごとに決まっている |
| 新しい手織り | 手織り・ウール | 乗っていない | 用意された中から選べる |
| ベニワレン風 | 機械織り・素材表示を確認 | 乗っていない | 選べる |
厄介なのは、写真ではほとんど見分けがつかないことです。下は新しく手で織られた一枚ですが、この写真だけで何十年も前の一枚と見分けるのは、まず無理です。
見るのは写真ではなく、素材表示と織り方の2か所です。ウール100%と書いてあるか。手織りと書いてあるか。この2つが揃っているかどうかが、あの足の沈む厚みに届くかどうかの分かれ目です。
擦れや色ムラを含めて、その一枚が過ごしてきた時間ごと欲しい人にはヴィンテージが向きます。他の一枚では代わりが利きません。
引き換えに、状態も寸法も選べません。出会った一枚のものに決まっています。
「風」と付くものの多くは、図柄をなぞって機械で織ったものです。薄手に仕上げたものなら、動かすのも干すのも楽になります。手織りウールの沈み込みには届きませんが、掃除の手軽さを最優先する家なら、こちらのほうが向きます。
新しく手で織られたウールのベニワレンデザインなら、毛足の厚みは出て、使用感は乗っていません。そのうえ寸法を選べます。
ヴィンテージの本物と、新しいベニワレンデザインの違いは、一点物かどうかではありません。手で織ったベニワレンは、古いものも新しいものも、どちらも一点物です。同じ図柄を頼んでも、線の揺れ方は一枚ごとに違います。
分かれるのは、そこに何十年ぶんの使用感が乗っているかどうかです。踏まれ、洗われ、日に当たってきた年月を引き受けるのか。それとも、まっさらな状態から自分の家で育てていくのか。
年月を引き受けるなら、状態は選べません。まっさらから始めるなら、寸法を選べます。判断はこの一行で足ります。
手織りのラグには、ほかにも織り方の違う型があります。あわせて読みたい記事です。
毛足の長いラグはダイニングテーブルの下には向かないと思われがちですが、敷けます。テーブルも椅子も、そのまま上に乗せることが可能です。
決めるのはラグの大きさです。椅子を引いて座り、後ろの脚がどこまで下がるかを実際に測ってください。その位置までラグが届いていれば、脚が縁の段差に落ちません。届かない大きさを選ぶと、毎回の出入りで椅子が引っかかります。
大判の薄いラグの上に、小さめのベニワレンを重ねる敷き方があります。足が触れる範囲にだけ厚みを作れるため、部屋全体を厚いラグで覆わずに済みます。見える床の面積が広がるぶん、部屋も開けて見えます。
RAMが置いているのは、3種類のうち真ん中にあたる新しい手織りです。図柄はモロッコとイタリアが組んで起こしたもので、織るのはイタリアのラグ工房。ウール100%の手織りで一点物でありながら、使用感がなく、同じ図柄を寸法違いで選べます。
ただし、どちらも手仕事のため、仕上がりの寸法は一枚ごとにわずかに揺れます。
2枚あって、違いは縁の作りだけです。
Rete(レーテ)は、地の上を菱形の線が緩やかに揺れながら走る、王道のベニワレンデザインです。短辺には撚ったウールのフサが付きます。フサが床との境目をぼかすため、ラグの輪郭が柔らかく落ちます。
素材はウール100%。寸法は幅45cm×奥行き60cmから幅170cm×奥行き240cmまで、5つのなかから選べます。
いちばん小さい幅45cm×奥行き60cmは、ラグとしては珍しい、玄関マットに使える大きさです。
小さいため、持ち上げて動かすのも、外に干すのも苦になりません。
Crosta(クロスタ)は、フサを付けずに仕上げた一枚です。生成りの地を黒い縁取りが四角く囲みます。縁でぴたりと止まるため、輪郭がはっきり出ます。
無地の地は、クッションやアートに柄があっても受け止めます。床と壁で柄がぶつからないためです。素材はウール100%。寸法は幅60cm×奥行き60cmと、幅170cm×奥行き240cmの2つです。
ベニワレン探しで手が止まるのは、同じ図柄の下に別物が混ざっているからです。見るのは呼び名ではなく、素材表示と織り方の2か所。あとは年月を引き受けるか、寸法を選ぶかを決めるだけです。
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